1.渡航の目的
2025年夏渡航では、子どもたちへの精神面・感情面のサポートを中心としたプロジェクトを企画し、複数の移民学習センターを訪問して交流を行った。また、mont-bell様やBEAMS様から衣類の提供を受け、貧しい地域へ寄付する活動も実施した。
その後の活動としては、高校生を対象に国際協力ワークショップを開催し、「国際支援の現場で出会った人生〜学生団体ができること〜」と題して、ミャンマーの現状について考える機会を提供した。具体的には、夏渡航で出会った学生たちのインタビュー映像を上映するなどし、ミャンマー問題について主体的に考える場を作った。
これらの活動を通して、14期の活動の主軸となる三つの柱を決定した。すなわち、①学生交流プロジェクト、②寄付プロジェクト、③イベント・社会発信プロジェクトである。現地での活動に加え、私たちが学んだことを日本国内で広く発信し、ミャンマー問題を風化させないためには、継続的な情報発信が不可欠であると考えた。
また、話し合いを重ねる中で、自分たちの知識の不足を実感した。チームのビジョンである「ミャンマーの人々にとって少しでもプラスになること」を達成するためには、まず私たち自身が現状を正確に理解する必要がある。そこで、(2026年夏渡航を見据えた事前準備として、)ミャンマー問題への理解を深めるための「知識の蓄積」と、各プロジェクトをより意義のあるものとするための「ニーズの把握」を目的に、春渡航を「知る」ことに重点を置いた活動と位置づけた。
以下が各活動における渡航の目的の詳細である。
【学生交流PJ】
持続性、相互性、対等性という3つの軸を基盤に、避難民学生の精神的な支えとなる繋がりを築くことを目的とした。具体的に、持続性の観点では、長期的な繋がりを現地の学生と取り続けることを目的に、夏渡航と同じ学校も訪問した。相互性の観点では、ディスカッションやワークショップ作りなど、互いに協働することで一緒に作り上げられるようなプロジェクトを行った。対等性という観点では、生徒たちと対等に交流することを念頭に、プロジェクトを考えた。
【寄付PJ】
昨年夏の渡航で行った寄付の反省から、「より現地のニーズに即し、相手へのリスペクトを欠かさない」形での寄付を行うための学びを得ることを目的とした。
具体的には、地域密着型で活動している団体や避難民/難民キャンプに詳しい個人を訪問し、現地で何が不足しているのか、現地の生の声、ひいては寄付活動自体がどうあるべきかを学びに行った。
【イベント・社会発信PJ】
今後発信活動を行っていくにあたって、「何を発信するか」だけでなく、「どう発信するか」も学び、五月祭やその後の発信活動に活かすことを目的とした。具体的には、
・オーディエンスに応じてどう発信手段を変えるか
・発信に当たって、客観的な事実の提示と感情への訴えかけをどう使い分けるか
・発信する情報はどうやって収集・決定しているか
などについて知見を深めることを目的とした。
2.渡航概要
渡航日程:2026年3月13日(金)〜3月20日(金)〈8日間〉
参加人数:19名
渡航先:タイ(バンコク、メーソット)
| 3/13(金) | 3/14(土) | 3/15(日) | 3/16(月) | 3/17(火) | 3/18(水) | 3/19(木) | 3/20(金) |
| 成田空港→ドンムアン空港 バンコク市内観光 | SOSオンライン講義 バンコク市内観光 夜行バスでバンコク出発 | メーソット到着 Docu Athan視察 | MMH(プロジェクト) | エドーさんのお話 SAW訪問 New Road宿泊 | New Road(プロジェクト) CDC訪問 国境視察 夜行バスでメーソット出発 | ドゥアンプラティープ視察 BCHF視察 | JRS視察 バンコク市内観光 ドンムアン空港→成田空港 |
3.活動内容
【学校別プロジェクト】
Min Ma Haw school
Min Ma Hawは、メーソットの移民学校の中では所謂エリート校の位置づけで、入試を突破した生徒たちがGED合格を目指し学習しています。夏渡航では数時間の滞在でしたが、今回は半日ほど滞在するスケジュールを組み、より深く生徒とかかわることができました。
プロジェクトでは現地校とMISの合同チームを組み、アイスブレイク、ディスカッションとプレゼンテーション、書道体験、ディベート、運動など、様々な活動を行いました。前回の訪問時に知り合った生徒と再交流し距離を縮め、継続的な関係構築の大切さを実感できました。
SAW (Social Action for Children and Woman)
SAWはタイにおいて孤児や女性の支援を行っている団体で、ミャンマー難民の子供たちを対象とした日本語学校の運営も行なっています。
最初に簡単な日本語でお互いの自己紹介をした後にMMHと同じく書道体験を行った。訪問時間が短かったのが心残りですが、日本文化に興味関心のある子が多く、双方にとって有意義な交流ができたと感じています。
New Road school
New Road School は、MISが今回初めて訪問した、メーソット中心部から車で1時間程離れた場所にある移民学校です。約半数のメンバーが、プロジェクトの前夜から学校に赴き宿泊しました。
翌日朝から、特技披露大会やカラオケのほか、ペーパータワーや大縄といった幅広いアクティビティを行いました。初めて訪問する学校、また、学校に泊まるという初の試みだったこともあり、反省点は多々ありましたが、MISとしても非常に貴重な経験になりました。
【施設視察】
Docu Athan
Docu Athanは、ミャンマークーデター後に厳しい状況に置かれたジャーナリストや市民活動家を支援する組織で、日本人が運営に携わっています。映像作品の制作を通じた発信活動を行っていることから、Aチームが実施している社会発信イベントへの示唆を得られると考え訪問しました。活動は大きく二つに分けられ、一つは、寄付によって集めたカメラを希望者へ貸し出すもの。もう一つは、メーソットおよびミャンマーで激動の中を生きる人々の姿に焦点を当てたドキュメンタリー映像の制作・公開です。訪問時には映像作品を実際に見せていただき、出来事そのものを伝えるだけでなく、登場人物の信念や感情に踏み込んで描写する構成は、我々に強い印象を与えました。今回得られた視点を有用し今後の社会発信活動に活かしていきたいと考えています。
ドゥアンプラティープ財団
子供達に対する教育の機会提供や困難な状況下にある人々への支援を行っている財団で、貧しい家庭状況にある子どもたちが十分な教育を受けられるようにする奨学金制度を主な取り組みとして行っています。バンコク最大のスラムと呼ばれるクロントーイ地区や、タイにおける「難民」についてのお話を聞くことができました。タイは難民条約を批准していないため、タイにおける「難民」の定義は非常に難しく、問題の複雑さを改めて知るきっかけになりました。夜行バス明けであったことからメンバーの疲労もあり反省点の残る部分もありますが、バンコクの現状を知り向き合うよい機会となりました。
Bangkok Community Help Foundation
2020年に、コロナ禍のスラムの深刻な食糧難を受けて発足し、スラムの住人向けの炊き出しや住宅改修、無料の英語教室などを開催しています。代表の方からお話を聞いたあと、MISのメンバーも食料の配布に参加し、初めは団体の拠点となっている建物までお弁当を取りに来た人たちに、その後はスラム街の家を回ってお弁当を配布しました。その間、スラムの成り立ちやタイ人でない代表者・スタッフの方の想い、これまでの活動など様々な話を聞くことができました。スタッフの方はスラムに住んでいる方とほとんど顔見知りで、お弁当が何個必要なのかなどを把握しており、やはり支援をするには現地の方々とコミュニケーションをしっかり取り(できれば相手の言語で)、信頼を得ることが必要なのだと感じたほか、それは私たちのメーソットでの活動、特にこれから取り組む寄付プロジェクトにおいて重要な視点になると感じました。
Jesuit Refugee Service
この団体の源流はベトナム戦争で生じたボートピープルを対象とした支援団体です。従来のRefugeeという定義が限定的であるとし、広く「意思に反して移動を強いられた人」(Forcibly Displaced Persons)を対象にしています。特に難民認定を待つ約2年間の期間(就労も帰国もできない)にある都市難民に対し、生活支援やカウンセリングを提供しているとのことでした。また、英語・タイ語教育や社会関係構築のためのセミナー、若者向けプログラムなどを通じて自立支援も行っている団体です。同じ難民問題に取り組む団体を訪問できたことは、今後Aチームの活動を継続する上でとても意味あるものになりました。
4.今後の展望
今後も社会発信活動と現地の学生との交流、寄付プロジェクトの3つを軸に、持続的な支援のあり方を追求していこうと考えている。
最終的な目標は、現地の人々に対して、物資などの「ハード面」と心の支えとなる「ソフト面」の双方から寄り添い、支援できる存在となることである。その実現のためには、日本国内において寄付や募金、その他の形で関わるアクターを増やすことが不可欠であり、その基盤として社会発信活動を位置づけている。
発信にあたっては、その影響力と責任を自覚し、正確で継続的に更新された知識に基づくこと、そして現地とのつながりを絶やさないことを大切にしたい。
また、学校別プロジェクトにおいては、現地の生徒とMISのメンバーが互いに新たな視点や価値観を学び合うことを目的とし、「相互性」「対等性」「継続性」を重視した関係構築を行う。一方的な支援にとどまらず、長期的な交流を通じて、双方にとって意義のある関係を築くことを目指していきたい。
