2025年度夏渡航①(タイ・ミャンマー国境チーム)

1. 渡航の目的

 日本に暮らす私たちは、「日本は教育が進んでいる」というイメージを当たり前のように抱きがちです。学校施設や教材の充実度、進学実績といった“ハード面”に目が向きやすく、それらを無意識のうちに教育の質そのものだと捉えてしまっている側面があります。
 しかし、昨年の夏に私たちがタイ・メーソットの移民学校を訪れた際、その先入観は大きく揺らぎました。確かに、環境や制度といったハード面は十分に整っているとは言えません。それでも、そこで出会った生徒たちは非常に熱心かつ主体的に学びに向き合っており、時には「教育の質が高い」とされる日本で学んできた私たち以上に、深い理解力や思考力を感じさせられる場面もありました。
さらに、2025年度の春渡航で虹の学校を訪れた際には、生徒たちの表情や学校全体の雰囲気から伝わってくる「満ち足りた感じ」に強く心を動かされました。特に虹の学校では、「豊かさ」に焦点を当てた教育が行われており、生徒たちが自分自身を大切にしながら日々を過ごしているように感じられた点が印象的でした。
 一方で、メーソットの多くの子どもたちは、「教育しか現状を変える手段がない」と強く信じ込まざるを得ない状況に置かれています。実際には大学進学率が非常に低いにもかかわらず、勉強が得意でない子どもほど「勉強しなければ未来がない」と感じてしまっている現実があります。これは、子どもたちの将来の可能性を狭めてしまう、非常に息苦しい構造だと私たちは考えています。
だからこそ私たちは、学習環境の整備や進学支援といったハード面のサポートを大切にしながらも、それだけにとどまらず、精神面・感情面のサポートを重視した活動を行いたいと考えています。学力や進学といった「成果」だけでなく、「自分は大切にされている」「日々を前向きに過ごせている」と感じられることこそが、生徒たちにとっての“豊かさ”であり、それはどのような環境においても育むことができるものだと信じています。
 今回の夏渡航では、この“豊かさ”を現地のさまざまな子どもたちに届けることを目指しています。そして、子どもたちの人生に少しでも前向きな影響を与えると同時に、私たち自身もまた、彼らとの関わりを通して学びや気づきを得られるような、双方向の豊かな関係性を築いていきたいと考えています。

2. 渡航概要

日程:2025年8月20日(水)〜8月31日(日)〈11日間〉
参加人数:25名
渡航先:タイ(バンコク、メーソット)

スケジュール概要

スクロールできます
20日21日22日23・24日25日26日27日28日29日30日
成田空港 → ドンムアン空港
バンコク市内観光
BACC・LPN視察
プロジェクト準備(買い出し等)
夜行バスにてバンコク出発
メーソット到着
プロジェクト準備
AAPP視察
CDC(メインプロジェクト)Min Ma Haw
Mae Tao
Hsa Mu HtawNew Blood School
Joy House
SAW訪問
ポップラにて2校訪問
難民キャンプ視察
GED生徒との交流会
夜行バスにてバンコクへ
バンコク到着
セカンドチャンス視察
2グループに分かれての視察
(A:シーカー財団、B:JICAタイ事務所)
観光
ドンムアン空港 → 成田空港

3. 活動内容

3.1 サマーイベントプロジェクト @CDC

 参加生徒を40名に限定し、生徒1〜2名に対してMISメンバーがペアとなって行動を共にする「バディー制度」を初めて導入しました。一対一の関係性を築くことで、より近い距離感で交流することができ、渡航後も続く長期的な友好関係の基盤を作ることができました。
 また、本プロジェクトの大きな特徴は、現地の生徒と私たちが「共に創る」企画である点です。参加生徒40名の中から5名を実行委員として選出し、企画立案から運営までを私たちと同じ立場で担ってもらいました。
 1日目はMIS側が主導し、Tシャツ染めや水風船企画、ビンゴ大会、特技披露などを行いました。2日目は現地生徒の実行委員が主体となり、民族舞踊の披露、日本とミャンマーの文化に関するディスカッション、ソムタムと白玉作り、流しそうめん体験を実施しました。最後には、2日間を振り返るシアター上映を行いました。
 一緒に考え、一緒に動き、一緒に創り上げるというプロセスそのものが、生徒たちにとって“豊かさ”を体感できる貴重な学びの場になったと考えています。

3.2 Min Ma Haw

 メーソットではエリート校とされるMin Ma Hawの生徒たちと共に、「一日ワークショップを企画する」というテーマのもと、ディスカッションおよびポスター形式での全体発表を行いました。理想の教育について輪になって語り合うことで、現地の生徒たちが普段の学校生活では学べていない分野や、本当に学びたいと感じていることを知ることができました。
 年代の近い生徒同士だからこそ可能な率直な対話を通じて、日常生活や将来の進路について本音を共有し合い、双方にとって大きな刺激となる時間となりました。

3.3 Hsa Mu Htaw

 カタカナ名札作りや英語かるた、おにぎりとお味噌汁の炊き出しを通じて、日本文化を体験してもらいました。閉鎖的な環境で暮らす子どもたちにとって、より広い視野を持つきっかけになることを目指しました。
 当初はGrade1〜6との交流を予定していましたが、幼稚園生やGrade7とも遊んでほしいという要望があり、また言語が十分に通じない場面もありました。その都度柔軟に計画を変更し、生徒一人ひとりを優先した交流を行うことができました。共に遊び、時間を共有する中で信頼関係を築くと同時に、私たち自身も現地の学校生活について多くを学ぶ機会となりました。

3.4 New Blood School

 日本文化の一つである「うどん作り」を通じた食の交流と、レクリエーション活動を行いました。雨天の中、限られた道具での調理となりましたが、無事に全員でうどんを囲むことができました。
 共同作業を通して、日本の文化を一方的に伝えるのではなく、ミャンマーの文化や遊び、ダンスなどを教えてもらう機会にも恵まれ、双方向の文化交流を実現することができました。

3.5 Joy House

 藍染体験や共同でのアート制作、ゲルニカを題材にした対話型鑑賞、「We are the world」の合唱などを行いました。これらの活動を通じて、日本文化に触れてもらうと同時に、アートが持つ多様性や、表現することの楽しさを共有しました。
 言語の壁を越えた表現と対話を通して、相互理解を深める貴重な時間となりました。

3.6 寄付プロジェクト @ポップラ

 SAW事務所を訪問し、清潔なトイレをより多くの人々に届けるプロジェクトについて、その意義ややりがい、今後の課題についてお話を伺いました。
 その後、複数の学校や難民キャンプを訪れ、実際に現地の人々の暮らしを自分たちの目で見学しました。日本の大学や企業、MISメンバーから集まった衣服を寄付するプロジェクトを実施し、受け取る側の反応はさまざまでしたが、現地のミャンマー避難民の方々とMIS双方にとって非常に意義のある取り組みとなりました。
 この経験を通じて、メンバー一人ひとりが寄付や国際貢献の在り方、その難しさについて深く考えるきっかけを得ることができました。

4. 今後の展望

 私たちのチームとしての目標は、支援の形がどのようなものであれ、「日本とミャンマーをつなぐこと」です。
 12期では留学プロジェクトを通じて主にハード面に重点を置いた支援を行い、13期では夏祭りプロジェクトを通じてソフト面を重視した支援に取り組みました。
 これまでの活動を土台として、今後14期が新しくよりよい形でこのつながりを発展させながら、私たち自身もミャンマー避難民の現状を学び続けていきたいと考えています。