2025年度夏渡航②(ベトナムチーム)

1. 渡航の目的

 私たちベトナムチームは、本年度から「ベトナムの廃棄物問題」をテーマに掲げ、活動しています。本チームでは、環境問題を解決するにあたり、現地の方々に対して日本人である私たちが意見を押し付けるのではなく、現地の方々と問題意識や原因の分析などを共有していきながら、共に主体となって取り組めるような活動を創り上げていくことを目指しています。
 今年度3月の春渡航では、ベトナムの環境問題の現状と取り組み事例を学ぶことを目的としてハノイを訪問し、環境問題に取り組む様々な団体の視察や、現地の大学生と環境問題に対して「学生」としてできる解決策を考えるディスカッションの開催などの活動を行いました。
 春渡航での学びと帰国後に行ったリサーチを踏まえ、現地のニーズ・課題の把握や原因の整理を行い、廃棄物問題の中でも、①レジ袋の使用量の削減、②スタジアムにおける廃棄物問題、③海洋ゴミ問題、に注目するという方針を決定しました。夏渡航では、上記3つのテーマに基づきながら、学生ディスカッションやワークショップ、視察を行いました。加えて、日越相互の文化について理解を深めるため、日本語学習クラブとの交流も例年通り行いました。

2. 渡航概要

日程:2025年8月12日~19日(8日間)
参加人数:13名(13期3名、14期10名)
渡航先:ベトナム(ホーチミン、ブンタウ)

スケジュール概要

スクロールできます
1日目(8/12)2日目(8/13)3日目(8/14)4日目(8/15)5日目(8/16)6日目(8/17)7日目(8/18)8日目(8/19)
日本出発HUTECHディスカッション
Les Rives
エコバッグ試作会
ブンタウへ移動
ジャンクショップ
Chay Nhất
ビーチクリーン
ブンタウ観光
ホーチミンへ移動
エコバッグ作りWS
@さくら日本語学校
@ドンズー日本語学校
チョイオイ日本語クラブ
東日クラブ
Nikonikoクラブディスカッション
観光(メコン川クルーズ)CLB TIeng Viet
・市街地の清掃活動
・ディスカッション
帰国

3. 活動内容

3.1 学生ディスカッション

【HUTECH,VJIT】

 ホーチミン市の工業系大学であるHUTECHとVJIT、そしてホーチミン元日本留学生クラブ(JUACH)の皆さまのご協力のもと、スタジアムにおける廃棄物問題をテーマに学生ディスカッションを行いました。
 活動の冒頭では、折り紙や習字など日本文化の紹介を行い、現地の学生と一緒に体験。さらに、ベトナムの歌の披露やインフルエンサーによる現地紹介など、文化交流を通じて温かい雰囲気で交流を深めました。
 ディスカッションでは、ステークホルダー分析や原因の深掘りをテーマに議論を実施。参加した学生の中には環境問題に普段触れていない人もいましたが、対話を通じて積極的に意見を出してくれ、現地学生ならではの視点や、日越比較に基づく意見は非常に示唆に富むものでした。「問題の存在は知っているが行動には移しにくい」という声は特に印象的で、私たちがベトナムで活動する意義を改めて考えるきっかけにもなりました。
 文化交流と社会課題の議論を通じて相互理解を深め、今後の協働へとつながる有意義な時間となりました。

【Nikonikoクラブ】

 ホーチミン市のオープン大学のNikonikoクラブと人文社会科学大学の大学生の皆さんと、廃棄物問題について議論をしました。特に、政府がとるべき対策と個人がとるべき対策の二つの側面から考えました。政府がとれる対策として挙がった意見は、①環境に取り組む企業や環境団体への投資、②環境教育の強化で国民の環境意識を長期的に高める、③ポイ捨てへの啓発ポスターの掲示、④地域住民参加型の環境イベントの開催など様々ありました。一方で、個人がとれる対策としては、①環境イベントへの参加、②ポイ捨てしない、③レジ袋を自主的に断るなどの意見が出ました。政府と個人がとれる対策を考えましたが、そもそも廃棄物問題への取り組みについて、政府がトップダウンで解決させた方が有効であって、個人ができることは限られているのではないかという意見が多く出ました。さらに、多くのベトナム人にはあまり廃棄物問題まで考える余裕がない人が多いという意見もありました。

【CLB Tien Viet】

  ベトナムの都市部でのゴミ問題の現状を学ぶため、Open UniversityのCLB Tien Vietの学生の皆さんと一緒にベンタイン市場周辺の清掃活動を行い、その結果についてディスカッションを行いました。

 収集したごみの中ではタバコの吸い殻や飲料用のプラスチックカップが特に多く見られ、また道路の端にごみが集まっていたことから、主としてドライバーによる投棄であることが推察されました。ゴミ箱の設置されている箇所の周辺ではほとんどポイ捨てが確認されなかった一方で、ゴミ箱とゴミ箱の間の区間には多くのごみが散乱しており、公共空間におけるゴミ箱の増設が有効な対策となり得ると考えられました。また、活動中にプラスチック袋にごみが入った状態で落ちているものを回収しようとしたところ、同行者より「それはウェイストコレクターが回収するため拾わなくてよい」と指摘を受け、現地の人々にとってウェイストコレクターの存在が生活の一部として定着していることを強く印象づけられました。市場の表通りではタバコの吸い殻以外のごみはほとんど見られませんでしたが、これは観光客が多く訪れる区域であるため、夜間に清掃が実施されていると学生の方が説明してくれました。一方、市場の裏通りではごみの散乱が著しく、政府が人目に触れる場所を重点的に清掃しているという先に得た情報とも合致していました。

 ディスカッションでは、ごみ問題に対して個人ができることについて話し合いました。6日目のNikoNikoクラブとの議論では政府がすべきことについて重点的に議論したため、より身近な解決策にも目を向けることを目標としました。ごみ拾いで見つかったごみの種類を列挙し、それぞれについて誰がなぜ捨てたのか考えました。ごみ拾いをしているときに、近くにいた写真屋さんが、「若者のこのような活動を応援している」と言って写真を無償で提供してくれた話を共有し、ごみ拾いによってすべてのごみを取り除くことはできないものの、若者の環境に対する姿勢を見せることで住民の意識を変えることはできるのではないかという結論に至りました。反省点としては、学生の英語力に差があり、英語が話せる学生同士のみで議論が盛り上がってしまったことがあります。全員が議論に参加できるよう、グループ分けの際に考慮できれば、より良い時間となったと思います。

3.2 エコバッグづくりワークショップ

 さくら日本語学校とドンズー日本語学校にて、古着からエコバッグを作るワークショップと日越の文化交流を行いました。幅広い年齢層の日本語学校の学生と交流しました。
 ベトナムのゴミ問題についてプレゼンテーションを用いて簡単に共有し、クイズ形式で日本のレジ袋削減について紹介しました。その後、MISが日本から持参した古着や参加者の方に持参してもらった古着からバックを制作しました。エコバッグづくりは言語の壁にとらわれず楽しむことができただけでなく、マイバッグ持参の意識を高めることにつながったと思います。
 文化交流ではお盆を紹介し、盆踊りを一緒に踊りました。また、折り紙も楽しみ、日本の文化により興味を持ってもらうきっかけを作ることができました。

3.3 視察 〜廃棄物問題に関して〜

【ジャンクショップ】

 ベトナムのビジネス化されたごみ収集過程について詳しく学ぶため、個人回収業者からゴミを買い取っている非公式のジャンクショップを視察しました。
 ベトナムでは、各家庭が出すごみを個人回収業者がバイクや自転車を使って回収する仕組みが一般化しています。ジャンクショップでは、そうしたコレクターからごみを買い取り、分別した上で、リサイクル業者やその仲介業者に販売する役割を担っています。素材によって価格が異なるため、プラスチックやアルミ、ペットボトルなどと細かく分けられていたことが印象的でした。
 実際に働いている方からは「普通の労働者よりも稼げる」と話を聞き、ジャンクショップのイメージが視察の前後で大きく変化しました。その一方で、強烈なごみの臭いや、高く山積みにされたごみの状況を目の当たりにし、衛生面や安全面における課題があることも痛感しました。

【VESCO】

 政府も関係しているごみ収集全体の流れについて学ぶため、ブンタウ市でごみ収集に携わる政府公認の企業、VUNG TAU ENVIRONMENT SERVICES AND URBAN PROJECT JOINT STOCK COMPANY(通称:VESCO)の方々に話を伺いました。この視察を通じて、ベトナムのごみ収集の複雑さや、政府がインフォーマルセクター(個人回収業者)に頼らざるを得ない現状についての理解を深めました。

<ベトナムでのごみ回収の流れ(ブンタウ市)>
現状、主に2つのルートで回収されています。
①非公式ルート
 住民 → 個人回収業者 → ジャンクショップ → 一時集積所 → 最終処分場・リサイクルセンター

②公式ルート
 住民 →VESCOの集積員 → 一時集積所 → 最終処分場・リサイクルセンター

 このシステムにより、分別されていなかったごみも最終的には分別される傾向にあります。インフォーマルセクターやジャンクショップは、分別して引き渡した方が利益が大きくなるためです。また、以前政府が道路に公共のごみ箱を設置したものの、住民が家庭ごみまで廃棄してしまったため、回収コストが増大し最終的にごみ箱が撤去されてしまった経緯についても伺いました。これらの経験から、視察前にはなかったような新たな視点を得ました。

【Chay Nhat】

 現地での海洋ゴミ問題に対する取り組みを知るため、ブンタウでの活動全体のプランニングにご協力くださったPhat様が運営するChạy NhặtというNPOの活動についてのお話を伺い、ブンタウの海洋ゴミ問題について議論しました。Phatさんは、故郷ブンタウの海岸が大量の海洋ゴミで汚れている状況に問題意識を感じ、ビーチでのゴミ拾い活動、子供への啓発、使い捨てゴミの削減などの活動を行うChạy Nhặtという団体を作ったそうです。活動を始めた当初は、周りから「ビーチを清掃しても、次の日にはまた同じ状況になり意味がない」と言われるなど理解が得られなかったそうですが、めげずに活動を続け徐々に活動の輪を広げてきたというお話に尊敬の念を抱きました。議論では、”Who is going to take leadership to solve those issues in Vietnam?””What is most important for environmental issues?”などの問いを通して、政府や企業、消費者、教育機関などの様々な主体、教育やインフラへの投資などの多くの要素が海洋ゴミ問題の解決に重要であることについて、学びを深めることができました。

【Les Rives】

 Les RivesはCSRとして廃棄物問題に取り組むクルーズ観光会社で、ゲストエクスペリエンス担当の方から、カフェにて事業と環境保護への取り組みを伺いました。紙ストローやガラス瓶利用によるプラスチックゴミの削減、サイゴン川清掃、エコバッグ利用の推進などを行っているそうです。お話から、川沿いのスラムからのゴミ投棄や悪臭問題、それに対する政府の隠蔽姿勢や住民移転の停滞など、日本では知る機会のないベトナムの環境課題について学びました。今回のインタビューを通して、環境教育は進んでいるものの親世代には浸透しておらず、教育だけではなく規制・経済も組み合わせた長期的な取り組みが必要であると感じました。

3.4 ビーチクリーン

 ビーチ清掃を通して海洋ゴミの発生源や傾向を分析するため、朝からブンタウの地元の中高生と清掃活動を行いました。MISメンバーと地元の中高生とでペアを組み約1時間ほど清掃しました。清掃中にVESCOが重機を使用してビーチ清掃を始めたため、安全面を考慮して予定より早めに切り上げました。その後地元のレストランで一緒に清掃を行った中高生と朝食を食べ、交流を深めました。ビーチのゴミは予想外に多く、清掃を行ってもすぐに元に戻ってしまうという言葉に、発生源に対処することの必要性を感じました。人力で拾って解決できるレベルのゴミの量ではありませんでしたが、拾うという作業を通して、意外なゴミがあったり量が多いゴミの種類に気づいたりと、遠目で見ているだけではわからないことを多く学べました。ゴミの種類は、サンダル、使い捨てカップ・カトラリー、漁網など、生活ゴミからビーチ利用者のもの、漁業関係まで多種多様でした。地元の若者にもビーチの不法投棄への問題意識を持っている人が多くいるということもわかりました。

3.5 日本語学習コミュニティとの交流

 ホーチミン市で活動する日本語学習コミュニティであるチョイオイ日本語クラブと人文大学東日クラブの皆さんと交流し、日本とベトナムをつなぐ文化の架け橋としてのつながりを深めました。

【チョイオイ日本語クラブ】

 カフェで毎週開かれている日本語交流会に参加させていただきました。学生だけでなく、ベトナムに移り住んだ日本人や外国人など多彩なバックグラウンドを持つ方と対話し、日本語やお互いの文化、キャリアや生活について活発に意見交換しました。特に日本語レベルの高い参加者が多く、アットホームな雰囲気の中で深い会話を楽しむことができました。

【人文大学 東日クラブ】

 毎週の定例会に参加させていただき、学生から社会人まで幅広い参加者の方々と交流しました。レクリエーションを通じて打ち解けた後、メンバーの行きつけのお店で食事会が開かれ、現地の皆さんとより親密な対話を楽しみました。昨年交流した方々と再会する場面もあり、継続的な関係の大切さと、このコミュニティの存在価値を改めて感じました。

 日越の言語・文化を通じた交流は、互いへの理解と信頼を育むと同時に、今後の活動への大きな励みとなりました。

4. 今後の展望

 今回の渡航を通して、ベトナムの複雑なごみ処理過程や、世代間の環境意識の差異を認識することができました。この学びを踏まえ、今後は、現地の方々が問題を自分ごとと捉え実際の状況に即した身近な行動から変化を生み出せるよう、プロジェクトを推進させていきます。
 このために、日本人である私たちが一方的に意見を押し付けるのではなく、共に主体となって活動することを大切にしたいです。具体的には、ディスカッションや共同的なワークショップを通して問題意識や原因分析などを共有し、現地の方々が問題の当事者として主体的に関われる環境をサポートします。
 また、現地の環境問題に取り組む人々と連携して活動の実効性を高め、幅広い世代にアプローチしていきたいです。さらに、文化交流などを通じて、日本に関心を寄せる人々と環境問題を結びつけていきます。このような多角的な活動により、ベトナムにおける環境意識の向上と持続的な行動の定着に貢献していきたいです。